「センターの神様」を信じる横浜高・増田珠。涙はなし、プロで会おう (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 かつて、増田はこんなことを言っていた。

「横高に入った頃は、本当にひどかったんです。入寮してすぐ腹痛になって、3日間練習を休んで......。初めて練習試合に出たときも満塁でトンネルをしたり、2~3打席連続で三振したり......。『ダメだ、終わったわ』って思いましたから(笑)」

 横浜高校長浜グラウンドにいる「センターの神様」から課せられた、過酷な試練。そのとき、増田は当時の渡辺監督からひと言も責められることなく、こんな言葉をかけられたという。

「最初に大失態するくらいのほうが、いい選手になるものなんだよ」

 その渡辺監督の予言めいた言葉が、すでに現実のものになっていることを今の増田の成長ぶりが示している。

 そして、一部でささやかれ始めている「横浜はポテンシャル頼み」という批判を封じるには、これからチームとしてさらなる進化を見せるしかない。

 増田は後輩たちに思いを託し、こう語る。

「万波を中心にいいチームをつくってくれるはずです。大阪桐蔭と一騎討ちするくらいのチームになってほしいですね。そのためには、全国に出てくる速いピッチャーを相手にどれだけ打てるのかの勝負だと思います」

 名門校が甲子園で初戦敗退したことで、眉をひそめるファンやOBも少なくないだろう。しかし、少なくともこの2年5カ月間、多くの人々が増田のプレーから活力を受け、新たな横浜高校ファンが増えたことは間違いない。増田のプレーは、すでにそんな影響力を宿している。

 甲子園のセンターの神様は、きっとこう言いたかったのではないだろうか。「君がここで本当の意味で輝くのは、もう少し先だよ」と。

 2017年8月11日、自分は増田珠のプレーを見ていた──。野球ファンがそのことを自慢できる日は、きっと近い未来に訪れるに違いない。

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