73歳と75歳の超ベテラン監督が語る「甲子園で指揮をとる幸せ」 (6ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 そして監督就任から12年、1997年の夏に悲願の甲子園出場。しかし、喜びも一瞬。初戦でその大会を制する高嶋率いる智弁和歌山と対戦し、6対19と完敗を喫した。

「バッティングに自信を持ってきたら、全国にはとんでもないチームがあると知らされてね。その悔しさを持ち帰って、それがあの年のバッティングにつながっていったんですよ」

 あの年とは──夏の甲子園で準優勝を果たした2009年夏のことだ。県大会から打ちまくり、初戦から準決勝まですべてコールド勝ち。決勝も12対4の大差で制すると、甲子園でも史上初の2試合連続毎回安打を記録。5試合で38得点を挙げ、中京大中京との決勝戦では6点ビハインドの9回二死から5点を奪うドラマを見せた。球史にその名を刻み、新潟の高校野球の力を全国に知らしめた。

 この夏、3年ぶりとなる甲子園は、今大会限りで勇退する大井にとって最後の指揮となる。

「野球人にとっていちばんの幸せはユニフォームをずっと着ていられること。大学の同窓会に出ると、いつもみんなに『大井は幸せだ』と言われてきたからね。あらためてその言葉がしみます。ほんと、この歳までユニフォームを着られたんだから、こんな幸せなことはないなって......」

 今年3月に「この夏限り」という報道が出てから、「監督と1試合でも多く」と選手たちが奮起し、春に続き、夏の県大会も制した。しかも県大会6試合すべて5点以上を挙げるなど、"大井野球"を実践して勝ち取った甲子園だった。

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