73歳と75歳の超ベテラン監督が語る「甲子園で指揮をとる幸せ」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 かつてのように怒ることは減り、逆に褒める回数は格段に増えたが、"鬼の阪口"を支えてきた熱き思いは、今も失われていない。昨年夏、県大会決勝で中京学院大中京に敗れた悔しさが、今回の甲子園につながったと阪口は言う。

「負けたあと、嫁から『だらしないゲームやったね。練習が甘いせいじゃないの?』って言われてね。自分でも思うところがあったし、負けの悔しさを忘れず、そこからもう一度厳しくやりました」

 体には闘病生活も経て満身創痍ながら、昨年夏の敗戦以降、合宿所で泊まることが増えた。夜間練習に付き合い、そのまま宿泊。朝に選手たちが学校に行くバスに乗り、自宅近くで降りて家に戻る。そしてまた午後から練習。そんな日の繰り返しだったという。

「子どもといる時間が長くなったよね。大垣日大に来て13年になるけど、こんなに合宿所に泊まった年はないから」

 今年のチームは、2年生右腕ふたりを含めた3人の投手が力を持っており、野手陣も堅守とそつのない攻撃で上位進出を目指す。監督生活50年を超えて迎える31度目の甲子園。最後にこんな思いを口にした。

「勝ち負けはあるけど、今年のチームは選手の姿勢がいいんですよ。本当に一生懸命やるから、負けたとしても拍手を送れるチーム。こんな真面目ないい子たちに囲まれてやれる幸せ。甲子園では勝負にこだわるけど、こだわりたくない......そんな心境です」

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