杉谷拳士が振り返る、帝京vs智辯和歌山「たった1球の敗戦投手」 (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Jiji photo

――杉谷選手のヒットによって逆転に成功します。甲子園の盛り上がりは最高潮になりました。

杉谷 次のバッターの沼田さんがカーンと打った打球がスタンドに消えて、ベースを回りながら『勝った!』と思いました。


1点差で「ピッチャー・杉谷」に「ウソだろう?」と

――劇的なホームランで、試合は12対8になりました。しかし、勝利の女神は気まぐれです。9回裏、強打の智辯和歌山打線が帝京の投手陣に襲いかかりました。

杉谷 前田監督は、ピッチャーがいなくなることを覚悟のうえで代打を出しましたから、みんな不安を感じていました。9回裏に投げるピッチャーがいない......誰が投げるかという話になって、ベンチで打診された人が「ちょっと......」と断っていたのを覚えています。それでも、9回の守りについたとき、「勝てる」と全員が思っていたはずです。

――点差は4。たった3つのアウトをとれば勝てます。帝京が圧倒的に有利であることは間違いありません。9回裏、過去に投手経験のある勝見亮祐選手がマウンドに上がりました。しかし、ストライクが入りません。先頭打者はフォアボール、次の打者もフォアボール。

杉谷 ランナーがふたり出て、甲子園のムードが完全に変わりました。嫌な雰囲でした。

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