アフリカから甲子園。おかやま山陽・堤監督の奇想天外な野球ロマン人生 (7ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami SHiro
  • photo by Kyodo News

 結果もともない始め、2014年春には赴任後初となるベスト4。その年のドラフトでエースの藤井皓哉が広島から指名を受けた。さらに昨年の春は、念願の県大会を制覇し、夏もベスト4。

 そしてこの夏、快進撃を続け決勝へと駒を進めた。創志学園との決勝は、5点ビハインドの8回裏に6点を挙げひっくり返すと、9回表に再逆転を許すも、その裏に追いつき、延長11回途中で降雨コールドゲーム。翌日の再試合を9対2で勝利し、ついに甲子園の切符をつかんだ。その瞬間、堤の頭のなかに苦しかった時代の思いが鮮明に蘇った。

「勝てなかったときは、『試合に勝ちたい』とか『甲子園に行きたい』という気持ちが自分になかった。『オレは野球を愛しているだけで、勝ち負けや甲子園に執着はない』と思っていたんです。でも、監督がそれでは勝てないし、選手にも申し訳ない。そういう気持ちが強くなってから、どうすれば自分のなかで戦うモチベーションが持てるかと考え始めました。"野球を世界へ広めたい"というテーマと"甲子園"がどうすれば結びつくのか。自分なりに考えたんです」

 2011年からはチームとしてJICAを通じ、中古道具を海外へ送る活動もスタート。練習試合の対戦校らを中心に協力の輪も広がった。しかし、まだまだ足りない。そこで考えたときに"甲子園出場"の意味が、堤のなかで明確になった。

「今の活動をもっと多くの人に知ってもらい、賛同してもらうためにも『甲子園だ!』と。そこがはっきりしたんです」

 甲子園でも勝ち進めば、これまで堤が、おかやま山陽野球が行なってきた取り組みがより広く伝わることだろう。

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