昨年準優勝の北海・大西健斗が語る「甲子園で負けてよかったこと」 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

――大西投手、アドゥワ投手の投げ合いが9回まで続き、最後は北海がサヨナラで勝利をつかみました。

大西 サヨナラ勝ちという結末だったこともあって、「次も勝ちたい」「もっともっと勝ちたい」と思いました。「甲子園ってこんなにもいいところなんだな」と。北海にとって22年ぶりの夏の勝利でしたが、自分たちが強くないことはわかっていましたから、僕だけでなく、チームメイト全員が大きな目標を口にすることはありませんでした。

――決勝に勝ち上がるまで危ない場面はたくさんあったのに、そのたびごとに冷静にピンチを切り抜けていった印象です。

大西 準決勝の秀岳館(熊本)戦では「ヤバいな」と思いました。僕の右腕はしびれていて、もう力が入りません。ピンチで秀岳館のスタンドから「あまちゃん」のテーマが流れてきます。その音に合わせてアルプススタンドの人たちが揃って応援するのを「うわっ、すごいな~」と感心しながら眺めていました。

 マウンドに集まった野手とは「ヤバいけど、面白くなってきたね」「みんな、すごく揃ってるぞ」「オレたちの応援だと思おうよ」「そうだな、地元はオレたちのほうが近いしな」などと話をしました。ジョークを言えるような雰囲気で、ピンチだけど、深刻ではありませんでした。「どうしよう......」という選手はひとりもいなくて、本当にいいチームになったと思いました。「好きだな」と思えるチームメイトでした。

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