昨年準優勝の北海・大西健斗が語る
「甲子園で負けてよかったこと」

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

――当時の大西投手の体重は60キロそこそこで、まだまだ線が細かった。1回戦の鹿児島実業(鹿児島)戦に三番手で登板したものの、2安打1四球でワンアウトもとれずに降板。4対18で惨敗しましたね。

大西 開会式直後の試合で、ふわふわして落ち着かない。前のピッチャーが打たれて僕に登板機会が回ってきましたが、どんなボールを投げたかさえ覚えていません。ひとつもアウトをとれませんでした。甲子園は怖いところで、もう行きたくない、ここで投げるのは自分にはまだ早いと思いました。僕にとっては、消してしまいたい過去です。悔しさだけが残りました。

――最後の夏、南北海道大会で大西投手は4試合すべてに先発・完投して、2年連続で甲子園の土を踏むことになりました。

大西 もちろん、前年の屈辱があったので、あのマウンドに立って勝たないと、甲子園が嫌な思い出で終わってしまうという思いはありました。だから、南北海道の代表になれてうれしかった。「また甲子園のマウンドに立てるんだ」と思いました。

――大西キャプテンが引き当てた初戦の相手は松山聖陵。アドゥワ誠投手(現・広島東洋カープ)がプロ注目の選手として話題を集めていましたね。

大西 あの試合で僕は、野球というスポーツの素晴らしさを再認識しました。松山聖陵には気持ちのいい選手がたくさんいて、誠実に野球に取り組んでいるチームだなと感じました。デッドボールをぶつけたら逆に気遣ってくれましたし、最後までフェアプレーばかりで。「野球って本当にいいな」と試合をしながら思っていました。

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