大阪桐蔭とガチで打撃戦。府立校・大冠は地元中学の軟式出身者が主役 (6ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

「5番・捕手」で主将の猪原隆雅は、決勝で敗れた後、こう語っていた。

「バッティング中心のチームをつくってきた自分たちの野球はできました。これだけの試合ができて、悔いは残っていません。ただ、2点足りなかったのは何かが足りなかったということ。そこを後輩たちは考えてほしい」

 主将として後輩たちに思いを託しつつ、勝者のような清々しい表情からは「オレたちの野球をやりきった」という充実感が伝わってきた。

 安打数は、大阪桐蔭の15本に対し13本。まさに互角の打ち合いだった。ただ、猪原はこうも語っていた。

「振る力では僕らも負けてないと思いました。でも、技術が違った。大阪桐蔭の選手はしっかり芯で捉えてミートするので、ひとつ間違えればホームランになり、長打の確率も高くなる。今日も大阪桐蔭にホームランが出て、僕たちは出なかった。そこに技術の差があると感じました」

 とはいえ、ホームランこそ出なかったが大冠はこの試合で6本の長打(すべて二塁打)を放った。これに対して大阪桐蔭はホームランを含め長打は5本。数字的には大冠が勝っている。しかし、4対4の同点で迎えた6回裏、大阪桐蔭の藤原恭大に喫した一発が強く頭に残ったのだろう。猪原がマスク越しに感じた"差"を、これからどう埋めていくのか。

「また、バッティングのチームをつくります」

 陽が傾いたグラウンドで東山監督がそう言い残し、大冠の長く、熱い夏は終わった。

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