大阪桐蔭とガチで打撃戦。府立校・大冠は地元中学の軟式出身者が主役 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 ただ練習時間は、平日は3時間半程度で、フリーバッティングは他部との兼ね合いもあり朝練でしか行なえない。そこで「スペースを見つけたらとにかく振る」(東山監督)と、工夫を重ねてきた。

 たとえば、大冠には"10種類の素振り"というメニューがある。これは10種それぞれに体重移動やインサイドアウトのスイング軌道など、目的を定めてスイングする練習だ。バットも長尺、短尺、打ち込み用の重量バット(金属)、鉄のバット、さらに不要になったバットに針金を巻きつけたものなど、何種類かのバットを使い分けながら、平日は1000本、土日は2000本の素振りを続けてきた。

 その結果、各選手のヘッドスピードは格段に上がった。東山監督は言う。

「ヘッドスピードが上がると、飛距離が出るのはもちろんだけど、ボールを待てるし、長くボールを見られるから見極めもよくなる」

 食事に対する意識改革にも取り組んだ。振って、食べて......パワフルなバッティングをつくり上げていった。

 今回のレギュラーメンバーを見ても、中学時代に硬式のチームでプレーしていたのは2人だけ。大半は中学校の野球部に所属していた軟式出身者だ。ただ、部員数は常に100人前後の大所帯。大会直前まで全員が同じメニューの練習をすることも人気の秘訣になっている。

 また、父兄向けに野球部の魅力や活動報告を兼ねた『ワインドアップ』という野球部新聞をマネージャーが作成しており、これを近隣中学校の野球部にも配布。こうした地道な活動が部員確保につながっている。

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