早実を撃破で甲子園。東海大菅生バッテリーが「勝利の配球」を明かす (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 日大三戦でも、その「引き出し」の多さには驚かされた。たとえば左打者に対しての投球なら、外のボールゾーンから入ってくるスライダーとインコースの膝元に沈むスライダーを使い分け、左右に揺さぶりをかけた上で決め球のフォークを振らせる。そんな高校生としては高度な投球ができる松本が背番号「11」をつけているのだ。鹿倉はこうも言っていた。

「この大会は松本ばかりが目立っていますけど、戸田(懐生/2年)も山内(大輔)も中尾(剛/2年)も練習試合で地方の強豪を抑えていますし、今はセカンドに専念している小玉(佳吾)もいます。構えたところにしっかり投げ切れる投手が揃っているので、自分の仕事はその良さを引き出すだけです」

 準決勝の日大二戦では11対8と辛勝。6点リードから一時は1点差まで追い上げられる展開だったが、最後は松本が好リリーフで締めた。その試合後、鹿倉は続く早実戦に向けてこんなことを語っていた。

「早実を相手に今日みたいな展開になったら、スタンドはもっと敵になると思います。でも、そうなっても結構楽しいと思うんです」

 鹿倉の言う「スタンドが敵になる」とは、2年前の苦い記憶のことを指していた。

 2015年夏の東海大菅生対早実の西東京大会決勝戦。東海大菅生が5点リードして迎えた8回表、早実は集中打で猛烈な追い上げを見せる。点差が縮まるたびに、神宮球場は異様な雰囲気に包まれた。当時1年生だった鹿倉は「スタンドの雰囲気が一体となって早実を応援しているようだった」と証言する。最後は3つの押し出し四球が絡んで逆転され、東海大菅生は目の前にあった甲子園出場をつかみ損ねたのだった。

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