東海大菅生が日大三に完勝した舞台裏。綿密なシナリオで早実も標的に (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 4回表には一塁走者の牛山千尋が、櫻井のスライダーがワンバウンドした瞬間にスタートし、二塁セーフになるシーンがあった。これは練習試合からチームとして徹底していたプレーだという。若林監督も「スライダーはワンバウンドになってキャッチャーが弾くことが多いので、『とにかく狙え』と言っていました」と証言する。

 5回表には俊足の田中幹也(2年)がスライダーの投球時に盗塁を成功させた。サインは「ランエンドヒット」で、もしストレートであれば打者の松井惇はヒッティングする予定だったという。この進塁は、直接追加点につながっている。

 こうして序盤から攻守に日大三を圧倒しつつも、若林監督は継投のタイミングをうかがっていた。

「松本には『とにかく5回もってくれ』と送り出しました。5回を抑えて、次に7回を抑えて、キャッチャーの鹿倉と話したら『もう1回はいけます』と言うので8回までいかせました。自分の感覚からすると、8回までいけるなら9回もいって完封する......と思うところなんですが、まあ2年前に決勝で5対0から負けたこともあるので石橋を叩きました。9回の1イニングなら、(2番手の)戸田(懐生/2年)がどんなに悪くても4点以内には抑えてくれるだろうと」

 松本は8回を投げ、球数は116。被安打3、奪三振10、与四球1、失点0という文句のつけようのない投球でマウンドを降りた。9回裏に2番手の戸田がマウンドに上がった際、スタンドではどよめきが起きた。試合の流れを変えかねない、思い切った投手交代だった。

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