大阪の古豪に現れたエースと主砲。
興国高、42年ぶりの甲子園なるか

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports

 もうひとりの注目選手・植田は先発のマウンドに上がり、5回を投げて14安打9失点。数字だけを見れば"炎上"なのだろうが、ところどころに非凡さを散りばめて、印象に残るピッチングを見せた。

 セットポジションから両サイドを丹念に突こうとする姿勢。ボディーバランスのよさと柔軟性は、投球フォームからもひと目でわかる。ただ、ステップした瞬間に体の正面を見せてしまう"開き"の早さは、前日にも5イニングを投げた影響なのか。

 体が開くから、相手打者はボールが見やすくなり、つまりタイミングも取りやすくなる。それが14安打という結果につながったのだろう。

 それでも、一方的にやられたわけではない。特に、左打者のインコースに食い込む速球は力があり、相手打者のスイングを圧倒していた。打者が「あっ!」と驚いて、思わず出したバットが間に合わず、三塁側ダグアウト方向に跳ね返されたファウル。植田の速球の質の優秀さが伝わるシーンだった。

 この試合に限っていえば、ピッチングよりもバッティングだった。

 植田は左打席に入る前から熱心にタイミングを合わせていた。打席に入ると、真ん中あたりのスライダーをしなやかに振り抜いて、ライト前に強烈な打球を弾き返してみせた。次の打席では、全身の連動を効かせた美しいレベルスイングからライトのネット中段にライナーが突き刺さった。

 植田のスイングの特長は、いい意味で力感を感じないことだ。おそらく、インパクトの一瞬に全身の力を集中させる技術を持っているのだろう。軽く振っているように見えて、力強い弾道の打球が飛んでいく。

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