大阪の古豪に現れたエースと主砲。興国高、42年ぶりの甲子園なるか (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports

 マウンドに上がった桐蔭学園の柿崎颯馬(そうま)も、「将来はプロ」と心に決めた選手だ。この試合はピッチャーとしてマウンドに上がっていたが、本来は神奈川屈指のスラッガー。打ちたいヤツの心の内は手に取るようにわかっている。

 その後の打席でも、初球に落差の大きいカーブから入って、気負う気持ちを空転させる空振りでカウントを稼ぎ、徹底して中野にフルスイングさせまいと知恵を絞り込んだ。

 結局、この日は最後まで気負いと力みが出て、本来のスイングは見られなかった。ただ、内野手の正面に飛んだゴロでも、打ち損じのフライでも、中野は全力疾走でベースに向かう。きっと、野球にひたむきな高校生なのだろう。

 ひとつ残念だったことは、ウェイティング・サークルでの過ごし方だ。長距離砲を打席に迎えて、相手バッテリーが考えることは「いかにしてタイミングを外してやろうか」ということだ。コースを間違えないことも大切だが、それよりもタイミングだ。タイミングさえ外せれば、ど真ん中でもフェンス手前で失速してしまう。

 ウェイティング・サークルの中野を見ていたが、彼が投手のフォームに合わせてタイミングを取っている場面は、一度も見られなかった。タイミングを合わせる動作は、前の壁を意識した理想的なステップでスイングするから、気負っている日の体の開きも修正できる。ウェイティング・サークルでの意識が変われば、履正社の安田尚憲クラスのスラッガーになっても全然おかしくない。

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