秩父の山奥にアマ野球の巨匠が来た。「歌舞伎打線」の連打で狙う甲子園 (3ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 また、山村留学制度を利用して、埼玉県内の遠方からも数人の選手が入学し、地元旅館で下宿生活をしている。

 商店街の一角にある老舗の温泉旅館・須崎旅館で暮らすレギュラー二塁手の高橋烈は「商店街の先にある高校までの道のりで 『今日も頑張ってね』とか『遅くまでお疲れさま』と声をかけてくれるのが、とても嬉しいです」と話すように、小鹿野高校野球部は町民とともに歩みを進めている。

 石山は「この町唯一のチームだから、愛されるチームにならないといけない」と言い、「商店街では挨拶して通るように言っていたら、一般の生徒も感化されて挨拶するようになってね。こないだは地元の中学の校長先生が、各家庭などへ配る学校だよりに"小鹿野高校野球部の挨拶は素晴らしい"と書いてくれたんですよ」と、その紙を嬉しそうに見せてくれた。

 7月10日に行なわれた市立浦和との2回戦(大会初戦)では、16安打を放ち8対1の8回コールド勝ち。4回に飛び出した身長159センチの捕手・須崎健(すざき・たける)の3ラン本塁打が試合の流れを大きく決めた。

 私立校を中心とした中学球児の獲得合戦が過熱している昨今の高校野球界だが、小鹿野の野球やそれを支える人々の熱さ、温かさに触れると、名伯楽によって鍛え上げられた 「"おらが町チーム"の甲子園」にもロマンを馳せたくなる。

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