坂本勇人を育てた名将が、フルスイングで茨城の盟主・常総学院に挑む (3ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 もともとは大阪出身で、高校野球の監督としては青森で名を馳せた金沢監督だが、今では「甲子園で勝てる茨城の野球をつくる」「(日立市が位置する)県北から甲子園へ」が口ぐせとなっている。

 茨城の高校野球は、木内幸男前監督やその遺伝子を引き継ぐ佐々木力監督が指揮する常総学院が盟主的な存在になっており、事実、この10年間で茨城から甲子園に出場し勝利を挙げているのは常総学院だけである。

「(光星学院や青森山田が出場しないと勝てなかった)昔の青森みたいですよね。それを払拭したい。『茨城を勝ち上がれば、甲子園でも勝ち上がれるんだぞ』というように持っていきたいんです」

 その常総学院の「ソツなく点を取って、守り抜く野球」を超えていくために金沢監督が掲げるのが、「打ち勝つ野球」だ。

 打撃指導に定評のある金沢監督が選手たちに徹底しているのが、トップを深く取り、そこから後ろ足(キャッチャー寄りの足)を軸にして強くスイングすることだ。その指導でこれまで多くの強打者を育成し、昨年は細川成也が茨城県新記録となる高校通算63本塁打の実績を引っ提げてDeNA入り、打撃センスは細川をも上回ると言われていた糸野雄星は社会人屈指の強豪・JR東日本に進んだ。

 今年はそうした飛び抜けた選手はいないが、金沢監督は「食らいついてくる根性は去年以上」と話す。

 そして県北地域から30年近く甲子園出場がないことについては「何千人という選手と、何百人という指導者が30年も成せなかったことをやろうとするのは並大抵のことじゃない。それを彼らが本気で考えていけるかどうか」と、あくまで選手の気持ちや意識こそが大事と言い切る。

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