坂本勇人を育てた名将が、フルスイングで
茨城の盟主・常総学院に挑む

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 金沢成奉(かなざわ・せいほう)監督はどこか浮かない表情でシートノックを終えると、選手を集め、怒号を響かせた。

「勝負に"もう1回"はないんじゃ。関東(大会)で負けてから、ずっとこうやんけ。もうやめや!」

金沢監督が就任して6年目、悲願の甲子園出場を目指す明秀学園日立金沢監督が就任して6年目、悲願の甲子園出場を目指す明秀学園日立 だが、この程度で怯(ひる)む選手たちではない。主将の若松祐斗が「やらせてください」と金沢監督の前に迫る。「近づいてくんな!」と金沢監督が押し返しても、若松は動かない。すると、金沢監督は熱を込め、核心を語った。

「エラーすんなとか言うてんちゃう。ボールにしがみついて野球をやれ。野生の獣が獲物を一発で仕留める覚悟でやれ。捕らえられないと死んでしまう、迷うてたら獲物は逃げるんや。この1点を絶対抑えてやる。相手から1アウトもらうのではなく、もぎ取ろうとしてやれ!」

 選手たちは「はい!」と声を揃え、血相を変えてグラウンドに散ると、数分前とはまったく違う雰囲気のノックが始まった。

 金沢監督は、青森の光星学院(現・八戸学院光星)の監督として甲子園に8回出場を果たし、巨人の坂本勇人ら多くの好選手を育て上げた高校野球界屈指の名将だ。2012年から茨城の明秀学園日立の監督に就任し、同校初の甲子園出場を目指して日々、指導に情熱を注いでいる。

 センバツ出場がかかった秋の関東大会には2年連続して出場し、夏は一昨年がベスト4、昨年は準優勝と、悲願の甲子園まであと一歩のところまで迫っている。

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