まさに「左の内川」。花咲徳栄・西川愛也の打撃術にスカウトも惚れた (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 打席の左右の違いはあるが、スイングの軸が崩れないこと、インパクトゾーンの長さ、バットコントロール、そして瞬発力。西川のバッティングを形づくっている"長所"は、すべて内川と共通している。

 体の前の、最も力が入るポイントでボールを捉えるから、バットをスパッと振り抜いているように見えて、ボールには強烈な逆スピンの回転がかかっている。だから打球がよく飛ぶのだ。

 冒頭のシートバッティングから1週間後に行なわれた練習試合。そこで見せたバッティングがまた見事だった。

 第1打席、相手チームの本格派右腕が投じた真ん中やや内寄りのストレート。球速は目測で140キロ前後だと思う。その球を西川はグリップを立てながら、線で捉えていった。高校生によくある、高めを上から切るようなスイングではない。インパクトまでに、バットのヘッドの心地よい"助走"があった。

 センターの頭上めがけて飛んでいったライナーが落ちてこない。懸命に背走するセンターが何度振り向いても、打球は失速することなく伸びていく。最後はヤケクソのような感じでセンターがジャンプしたが、差し出したグラブのずっと上を越えていった。

 その後の打席でも、火の出るようなライト前に、アウトにはなったが左中間に強烈なライナー、最後も1打席目と同じようにセンターの頭上をライナーで越える三塁打を放ってみせた。

 アウトになっても、ネット裏に居並ぶ各球団のスカウトたちから「おっ!」と声が漏れるほどの打球を放つなど、見る者をまったく飽きさせない。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る