元ヤン主将の涙が変えた!茨城・総和工がチーム一丸で目指す甲子園

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 3月の沖縄キャンプ。その3日目に"事件"は起きた。

「オメーらみたいな嘘つきは嫌いだ! 信用できねえ!」

 大竹凌大(おおたけ・りょうた)はそう言い放つと、目から涙を溢れさせた。練習後に行なわれた宿舎でのミーティング。陰では厳しい練習への不平不満を言うにもかかわらず、ミーティングでは誰も本音を言わないばかりか、きれいごとの建前を言う。そんな部員たちの姿に、主将の大竹は我慢がならなかった。

バッテリーを組む大竹凌大(写真左)と鈴木健修バッテリーを組む大竹凌大(写真左)と鈴木健修 181センチの大型左腕で、好調時には右打者がインコースのストレートにたじろぐほどの投球を見せる。そんなプロ球団スカウトも視察に訪れる投手だが、様々な葛藤を越えて夢舞台を目指している。

 茨城県西部の古河市にある県立総和工業高校。JR古河駅から約10キロの位置にあり、路線バスもほとんど通っておらず、地元のタクシー運転手は「この辺りは陸の孤島ですよ」と自虐的に笑った。

 十数年前に校内の雰囲気が荒れていたことはあるが、「現在は普通の学校です」と鈴木正良監督は言う。だが、勧誘のため近隣の中学に出向いた際には「すいません。この子は勉強ができるもので......」と冷たくあしらわれ、憤ったこともある。

 それでも、同期に高津臣吾らがいた名門・亜細亜大出身で、前任校でも小規模校の明野高を県16強に導いたこともある鈴木監督が就任して6年。「鈴木先生の指導を受けて、地元から甲子園に行きたい」と選手が集まってくるようになってきた。同じく名門・明治大出身の遠藤正憲コーチとともに、時に厳しく時に明るく、選手たちの手綱(たづな)をうまく操り強化してきた。

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