ふたりの早実4番打者に見る、清宮幸太郎の幸福なスラッガー人生 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 高校生で、しかも1年生でこれほど確立されたインサイドアウトのスイングを身につけている打者は、野村のほかではPL学園時代の清原和博しか思い浮かばない。ボールの内側を強烈に引っ叩いて、右中間に強烈な打球を放つ野村のバッティングを、清宮はいつも間近で見ていた。

 圧倒的なパワーを持ちながら、それに頼ることなく卓越したバットコントロールと絶妙のタイミングの取り方でホームランを量産する。それが清宮の"怪物"たる所以(ゆえん)である。

 そんな"打撃職人"である清宮が、1学年下の後輩ながら圧倒的な技術を持つ野村のバッティングに関心がないわけがない。

 この春、球場に詰めかける野球ファンたちの「全打席ホームラン」の期待に応えようとしたのか、清宮は自分のバッティングを見失いそうになっていた。そのとき、ダグアウトからじーっと凝視していたのが、4番・野村のバッティングだった。

 清宮の強烈なスイングを目の前で見れば、普通の高校生なら「よし、オレだって......」といつも以上に力んで打席に向かっていくところだろうが、野村という選手は清宮に煽(あお)られることがまったくない。「僕はこういう打者ですから......」と言わんばかりに、涼しい顔でボールの内側を叩き、右に左に長打を連発する。

 そんな野村のスイングに、この春はインパクト"ひと味"加わった。インパクトの瞬間、リストの返しでヘッドを効かせ、グイッと押し込むテクニックは、実は清宮が得意としているものだ。その"宝刀"を後輩の野村がいつの間にか吸収していたのだ。それにより、昨年までは右中間突破だった打球が、軽々とオーバーフェンスするようになった。

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