ふたりの早実4番打者に見る、清宮幸太郎の幸福なスラッガー人生 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 大学に進み、バットが金属から木製に変わって、"そこ"を攻められたら厳しいだろうなと思っていたが、2年経った今、早大で不動の4番打者に君臨。この春のリーグ戦では、5月26日現在、打率.448で首位打者を走っており、本塁打、打点ともリーグ2位。三冠王も狙える位置につけている。

 ふんわりとした両腕の構えは、高校時代にはなかった。それによって懐が広くなった分、インコースにも難なく対応できるようになった。

 清宮から学んだのかどうかはわからないが、同じ時間と空間を共有することで、技術が伝染することは間違いなくある。

 2年前の夏、加藤は劣勢の苦しい場面ほど、「清宮まで回せ!」とチームを鼓舞した。本来なら、1年生に過剰なプレッシャーをかけまいとするものだが、あえて重責を背負わせることで、怪物の才能を引き出してせた。

"4番・主将"というチームの大黒柱なら、「オレに回せ!」と見栄も張っても不思議はないが、あえて1年生の清宮にその役回りを任せた度量の大きさと、的を射た判断力はたいしたものだと思う。

 その大役を、別に驚きもせず、「今までもそうでしたから......」と言わんばかりに、サラッとこなす清宮の強心臓と実力。加藤がいたからこそ清宮はノビノビと、また堂々とプレーできていたと思うし、清宮がいたからこそ加藤は自分の打撃を再確認できたんだと思う。

 その加藤が卒業し、入れ替わりに入ってきたのが野村大樹だ。

 172センチ、78キロ。右投右打の三塁手は、一見、どこにでもいそうな普通の高校球児に見えるが、才能溢れるバッティング技術と大人びた人間性は、どちらも高校生の枠を飛び越えていた。

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