エース温存で18失点の日大三が手にした「夏に打倒・早実」の攻略法 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この日最大の誤算は、先発マウンドに立った岡部仁が右ヒジ痛を訴えて初回で降板したことだ。津原は言う。

「2番打者に投げているときにヒジに(痛みが)きたみたいです。4番の野村(大樹)くんにホームランを打たれて、限界ということで交代しました」

 岡部は今春の都大会で二番手格として経験を積んだ右腕だった。強豪・東海大菅生との4回戦では櫻井をリリーフして、1点リードを守り切る好リリーフを見せている。そんな岡部を初回で失った。櫻井を温存していることから、この時点で日大三は「飛車角落ち」の状態だった。

 この日、日大三は6人の投手が登板したが、全員が失点を記録した。最後は投げられる投手がいなくなり、一塁手の金成麗生(かなり・れお)まで登板。金成は試合前日にブルペンに入っただけだったという。

「櫻井は『絶対に使わない』と言われていましたし、自分たちもそう思っていました。なので、投げられるヤツは全員準備しようと。金成は1年から2年の途中まではピッチャーで、もともとスピードはあったんです。角度があるので、余計速く見えますしね。でも球場のスピードガンで148キロも出たのはさすがに驚きました。ときどきすごくいいボールが来ていましたね」

 さすがに一夜漬けでは調整が足りず、金成は抜け球を連発して2/3回を投げて4四死球で降板した。投手陣全体でも12四死球と、配球以前に「いかにストライクを投げさせるか」を考えなければならなかった。変化球を苦手としている投手もおり、打たれるとわかっていてもストレートのサインしか出せない場面もあった。

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