清宮フィーバーの陰で日米スカウトが感じた今センバツの「打低投低」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「指導者が厳しく指導できた時代は、選手を心身ともに追い込んで『一瞬のスキで点を取られる』ということを教えて殻を破るスタイルがありました。でも、近年は体罰が問題視されたり、全国的に指導者への風当たりが厳しくなってきた。それで選手の緊張感が薄まり、高校野球で気持ちと体がひと皮むけることができていない印象があります。インターネットで情報を収集できたりするので、選手ひとりひとりのスキルはアップしていますが、もっとも大事なメンタル的な部分が成長できていないと感じます」

 生き馬の目を抜くようなチームが少なくなり、ポテンシャルに頼った大味な野球をするチームが増えた。高校野球を「通過点」と考えれば、それでもいいように感じるが、結果的に高校野球のレベル低下、ひいては人気低下を招くおそれがあるということだ。ただ、大屋スカウトは「日本の高校野球は過渡期にある」とも指摘する。

「かつてはアメリカも体罰的な指導がありましたが、今は一切ありません。日本も世界規格への移行をしていかないといけないでしょう。感情的にならずに基本からしっかりと教えること、選手の個性を否定せずに伸ばすこと。元プロの指導者は『個々で違うもの』という考えが浸透しているだけに、元プロ指導者が増えていることはいい方向に作用する可能性もあるでしょう」

 いよいよセンバツも決勝を残すのみだが、いくらレベルが低下したと言われようと高校球界にとって最高峰の戦いであることに間違いない。また、苑田スカウトが「来年はいますよ」と語っていたように、根尾昂(大阪桐蔭)や小園海斗(報徳学園)といった将来楽しみな2年生の逸材も出現している。

 そして、目の前の熱戦を見守る者のなかには、将来の野球界を支えるであろうジュニア世代のプレーヤーもいる。そんな観戦者たちに大きな刺激を与える結末は待っているのか――。春の戦いは、いよいよ大詰めを迎える。

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