敵に勝つより味方に勝つ。大阪桐蔭の強さは熾烈な「競争原理」にあり (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 昨秋、大阪桐蔭は上位打線5人のうちの4人を"1年生(当時)"が務めていた。この春も、静岡高との試合では、スターティングメンバーのうち6人を"新2年生"が占めていた。

 オールマイティプレーヤー・根尾昂をはじめとして、根尾以上の可能性すら感じさせる俊足強肩の外野手・藤原恭大、日本人離れした長距離砲の雰囲気漂う山田健太。挙げていったらキリがないほど、才能あふれる逸材が揃った新2年生たち。

 彼らに隠れがちだが、新3年生の坂之下晴人、福井章吾のしぶとさや勝負強さは、昨年のレギュラーだった中山遙斗(遊撃手)、永広知紀(二塁手)の"くせ者"たちのプレーを1年半見続けていただけあって、しっかりと"DNA"を引き継いでいる。

 試合後の囲み取材で、ある中心選手がこんなことを言っていた。

「どんなに勝っても、ウチは油断できないんで......。相手に勝っても、もっともっと練習せんと、すぐ追い抜かれますから」

 悔しい記憶を思い出したのか、その日、大活躍したのにも関わらず、その選手に笑顔はなかった。むしろその表情は試合中よりも厳しさを増していた。

「正直、試合で相手に勝つことって、ウチの選手たちは楽やと感じていると思います。チームのなかで、ほかの選手にレギュラーを奪われないようにすることの方が、どれだけしんどいか......」

 かつて、大阪桐蔭からプロへ進んだある選手が、そんな"内緒話"を明かしてくれたことがある。

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