WBCの隠れた功績。
センバツ球児たちが
侍ジャパンから学んだこと

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 3月21日(日本時間22日)の準決勝でアメリカに惜敗し、WBCの戦いに幕を下ろした侍ジャパン。その健闘ぶりは素晴らしく、敗退は残念の一言に尽きるが、侍ジャパンの責務はただ勝つことだけではない。ジュニア世代の野球離れが進むなかで、WBCをきっかけに野球の魅力を次代に伝えるという重大な役割もあった。

 かつては巨人戦のテレビ中継が毎日あることが当たり前だったが、娯楽が多様化した今はそのような時代ではない。次代を担う選手たちにとって、WBCは貴重な学びの場であり、日本野球の伝承の場でもあった。

WBCでの小林誠司のように存在感のある捕手を目指したいと語る作新学院の加藤翼WBCでの小林誠司のように存在感のある捕手を目指したいと語る作新学院の加藤翼 今春のセンバツに出場している選手たちにWBCを見たかと質問すると、ほとんどの選手が「見ました」と答えていた。そこで、彼らが誰のどのようなプレーに心を打たれたのかを聞いてみることにした。

 まず捕手の球児に聞いてみると、やはり大会で大活躍した小林誠司(巨人)の名前を挙げる選手が多かった。そのなかには、大会屈指の好捕手として注目される古賀悠斗(福岡大大濠)もいた。

「WBCを見ていて、配球やスローイング、捕手としてのまとまりがすごいと思いました」

 22日の創志学園との初戦では、WBCでの小林のプレーを再現するかのような好プレーを見せている。5対2とリードした8回表、一死満塁のピンチで二塁後方にフライが上がった。二塁手の斎藤友哉が後退して捕球すると、三塁走者がタッチアップ。斎藤はすぐさま本塁に送球したが、捕手の古賀は本塁のクロスプレーをあきらめ、前に出て捕球して三塁に転送した。三塁には同じくタッチアップを狙った二走が滑り込んでおり、これをアウトに。嫌な流れを最小限に食い止めるビッグプレーだった。

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