「滞空時間7秒14」の大飛球に見た、早実・清宮幸太郎のスケール (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「練習のなかではあるんですけど、試合では自分ではなく相手との戦いになるので。そこに集中できればいいなと思います」

 打者は本来、受動的な立場にある。投手があらゆる手段を講じて打者のタイミングを外そうと主体的に攻めてくるのに対して、打者はいつも受身で対応しなければならない。特に清宮ほどの打者になれば、試合中に甘いボールなどほとんど来ない。そのなかで、いかにして自分のタイミングでボールを待ち、強いスイングができるか──。清宮の「開かない打撃」はそのための策なのだろう。

 明徳義塾戦では1打席目のセンター前ヒットをはじめ、5打席中3打席が初球打ち。打ったのはすべて外のストレートで、早めの仕掛けが目立った。清宮にその理由を聞いてみた。

「甘い球というか、打てる球が来たら振るというスタンスなので。自分としては、そんなに悪いことではないかなと思います」

 清宮は「打てる球」と言ったが、実際には外角ギリギリの難しいボールもなかにはあった。明徳義塾の捕手・筒井一平は「(外角の厳しい球で)見逃されると思ったら手を出してくれて、フライに打ち取れた」と証言している。清宮は後に「打つべき球を選べればよかった」とも振り返っている。

 試合前、筒井に「どんな形で清宮を打ち取るイメージがあるか?」と聞くと、「泳がせてフライを打たせるか、高めに手を出させたいです」と答えていた。だが、この日の清宮はセンターフライ、キャッチャーフライ、レフトフライと3本のフライを打ち上げたが、泳いでスイングするシーンは一度もなかった。

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