「滞空時間7秒14」の大飛球に見た、
早実・清宮幸太郎のスケール

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 早稲田実業・清宮幸太郎にとって、初めての春のセンバツ大会。その初戦・明徳義塾との一戦は、敗色濃厚だった流れから一転、同点に追いついて、延長戦の末に5対4で競り勝つ熱戦になった。清宮自身は1打席目にセンター前ヒットを放ち、最先のいいスタートを切ったものの、トータルで見れば4打数1安打1四球。この日のヒーローは、9番・遊撃手ながら3安打4打点を挙げた伏兵・野田優人(2年)だった。

 頼もしいチームメートたちを語る清宮は、いつも饒舌だった。

「みんないい顔をしていましたね。本当に生き生きしていましたし、怖気づくようなヤツは一人もいませんでした。いい雰囲気のなかで試合ができたと思います」

 このセンバツ初戦、「"屈辱の秋"を経て、清宮幸太郎はどんな変化を見せるのか?」をテーマに試合を見ていた。

 昨秋の東京大会決勝戦、清宮は日大三の本格派左腕・櫻井周斗から5打席連続三振を喫している。三振したボールはすべてスライダー。櫻井の投じた打者の手元で鋭く落ちるスライダーに対して、清宮は腰砕けになって右手一本で空を切る。まるでリプレー映像のように同じ空振りを繰り返した。

 この屈辱の体験を通して、清宮は「体を開かずにセンター中心に打ち返す」という打撃をテーマに取り組むようになった。昨秋最後の練習試合では、左投手に対して珍しくレフトスタンドに高校通算78号を運んでいる。ボールを手元まで呼び込んで、強く叩けなければ逆方向へのホームランは生まれない。清宮が新境地へと踏み込もうとしていることがうかがえる一打だった。

 この明徳義塾戦の試合前、清宮に「開かない打撃」の手応えを聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

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