運命の日。「小さな独立リーガー大学生投手」にドラフト指名はあるか (5ページ目)

  • 谷上史朗●文・写真 text&photo by Tanigami Shiro

 だが、大学2年生でもある山川については、NPBが「学生であることが独立リーグの所属より優先される」という見解を示したため、「来春の卒業見込みがなければ指名対象外」という規則に沿い、その時点で指名の可能性は消えた。それでも山川の野球人生のなかではじめて「NPBの世界」が頭に浮かんだ。

 NPBを意識してからはテレビ中継を見ていても、小柄な投手に目がいくようになったと山川は言う。

「谷元投手とか、興味を持って見るようにしています。背が低いからボールの軌道は下からホップする感じ。僕も真っすぐを投げるときはそのイメージを持っています。そのイメージづくりをするために、軟球を投げて練習することもあります。身長は気にしていないんですけど、常に僕の前にあるひとつの壁。その壁をなんとか越えていきたいです」

 大学4年生となった今シーズン、最速は152キロまで達した。9月半ばに行なわれたリーグ戦では、NPBから7球団のスカウトが視察に訪れた。スカウトからは「身長のなさ」「リーグのレベル」「プロのレベルに耐えうる体力があるのか」「本当の厳しさを知らない」など様々な指摘があるが、なかには山川を評価する声もある。

「育成でも行きたい」とNPB入りを願う山川だが、こんな大きな目標も口にする。

「将来は日本を背負って、世界と戦えるようなピッチャーになりたい」

 根拠のない大言壮語ともとられかねないが、5年前、10年前のことを振り返れば、あそこからここまで来たのだから......との思いが山川にはある。

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