運命の日。「小さな独立リーガー大学生投手」にドラフト指名はあるか (4ページ目)

  • 谷上史朗●文・写真 text&photo by Tanigami Shiro

 1年目に行なった阪神の二軍との交流戦にもセカンドとして出場している。ただ、NPBで指導経験のある池内豊投手コーチは、山川のボールに可能性を感じ、投手としての練習も始めることになった。

 そして、2年目の春にBFL選抜とオリックス二軍との間で交流戦が行なわれる。この一戦が山川の運命を変えた。「セカンドもできるし、いざとなったらピッチャーもできる」ということで選抜メンバー入りした山川は、大差がついた試合終盤、投手として出番が回ってきた。

 山本和作に満塁本塁打を打たれるなど、プロの洗礼を浴び4点を失ったが、人生で初めてスピードガン表示のある球場で投げたというボールは、しばしば140キロを超え、最速146キロをマークした。

「ブルペンで投げていると、先輩に『オリックスのピッチャーが143キロを出しているから、お前は144キロを投げてこい』って言われて。『わかりました!』っマウンドに行ったら146キロが出たんです」

 翌日、首脳陣から「セカンドはもうやらんでいい」と言われ、投手専任の日々が始まった。

 体は小さいが、ブルーサンダーズ入団前の測定会で50メートルを5秒7で走るなど、身体能力は抜群。父はバレーボール、母はバスケットボールの競技経験を持ち、兄は硬式野球から現在は競艇選手として活躍中。スポーツ一家のDNAは、山川からスピードボールを生み出す上質の筋肉を与えたのだ。

 オリックス戦のあとも147キロ、148キロ......と球速は上昇。徐々に自信も芽生え、チームのセットアッパーとして活躍。やがて興味を口にするNPBのスカウトも現れた。

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