勝負は試合前から。甲子園の主将たちが語る「じゃんけん必勝学」 (4ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 星稜の虎谷貴哉もそのひとり。あまりにも負けが続き、しびれを切らしたのがじゃんけんに立ち会う山下智将部長だった。

「また勝てない、『じゃあ、オレが出すよ』から始まったんです。キャプテンはクソまじめで何を出すかわかりやすい。だから、暗示ですね。最初にこれを出して、あいこになったらこれを出せと」

 何を出すのかを決めるのに参考にするのは相手の性格。石川大会決勝の日本航空石川戦では、強気な相手キャプテンの性格を読んで「チョキはない」と判断した。ないと思うものを消せば、悪くても"あいこ"にはなる。そうやって、何番目に何を出すかまで指示をした結果、勝率は劇的に変わる。山下部長がアドバイスを始めた春の石川大会準決勝から夏の石川大会、甲子園の初戦まで何と8連勝を記録した。

「僕は後攻を取ってほしいんです。特に(準決勝の)小松大谷戦は後攻がよかった。部長の"戦力"は大きいですよ」(林和成監督)

 星稜対小松大谷といえば、一昨年夏の決勝で9回裏に0対8から一挙9点を奪って奇跡の逆転勝利を挙げたのは記憶に新しいところ。もしまた似たような展開になれば、相手はもちろん、スタンドの観客も奇跡の再現を期待して盛り上がることは容易に想像がつく。先攻後攻を選ぶ際には、そんな過去の試合も材料になる。

 人に頼らず、じゃんけんを研究しているのが、いなべ総合のキャプテン・上中裕太だ。"じゃんけん必勝法"をネットで検索するなど独自に情報を集め、三重大会では3勝2敗と勝ち越した。

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