甲子園で際立った存在感。ユル強い個性派チーム、嘉手納の夏 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「コンパクトにセンター返しを心がけていこうと。それを選手たちが実践してくれました。黙っていると振り回すので、基本に立ち返ってセンター返し。ピッチャーの球も速いので振り回すと助けてしまう。だからバットをいつもより指2本分くらい短く持って、コンパクトなスイングでいこうと話していました」

 確かに19安打のうち、長打は2本だけ。だが、大蔵監督の言葉を聞いて違和感を覚えた。どう考えても「コンパクトなスイング」ではない打者がいたからだ。しかも、3番を打つ主砲の大石ならまだわかるのだが、それは8番を打つ大城堅斗だった。

 この日、2安打1打点と活躍した大城に話を聞くと、「自分のスイングができました」と言った。「自分のスイング」とは? と問うと、大城はこう答えた。

「近め(インコース寄り)に来たら強くフルスイング。外は逆方向にシングル(ヒット)を狙うスイングです」

 大城は1打席目にインコースのボールに対して、レフトオーバーに二塁打を放っている。バットで背中を叩かんばかりのフルスイングは印象的だった。なぜこの打者が8番を打っているのか? と思ったら、春までは4番を打っていたという。

「ケガをして、その後にチームの朝ごはんの時間に行かなくて、怒られて、監督から『4番から外す』と言われました」

 大城に「監督からコンパクトなスイングという指令が出ていたみたいだけど?」と聞くと、大城は平然と「聞いていません」と言った。念のためもう一度確認したが、「言われていません」。本当に大蔵監督が言っていないのか、大城が単に聞き逃しただけなのかは定かではないが、大城はいつも通りバットを長く持ち「自分のスイング」をしていたのだという。

「言われたら聞きますよ」という大城の言葉に、思わず吹き出してしまった。

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