甲子園で際立った存在感。ユル強い個性派チーム、嘉手納の夏 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 2番打者で時にリリーフとして登板する仲井間光亮もまた、トリッキーなプレーをする選手だった。

 前橋育英戦で2点を追う7回表、無死一、二塁のチャンス。打席に入った仲井間はバントを試みるも、投手後方への小フライになってしまう。結果的に打球が投手と遊撃手の間にポトリと落ちて内野安打となったのだが、後で聞くと仲井間はこともなげに「狙ったとおり」と言ってのけた。

「ピッチャーの後ろに落とすバントはずっと練習していました。去年の夏に(沖縄大会で)相手チームにああいうバントをされて流れが変わって、すごいなと思って。ボールを乗せて上げるようにプッシュバントするんです。あの場面は自分で考えて、ああいうバントをしました」

 また、打っては全身を投手方向に投げ出すような形でヒットを打つシーンもあった。他チームでは指導者に叱責されそうな打ち方だが、仲井間に聞くとこんなコメントが返ってきた。

「バットを放り投げるような打ち方はクセなんですけど、いいクセだったり、悪いクセだったりします。今日はいいクセでしたね(笑)」

 嘉手納は前橋育英に10対3で快勝した。前橋育英は3年前の夏の甲子園を制し、今年の5月にはタレント揃いの横浜(神奈川)に完勝して、関東大会チャンピオンに輝いている。今夏も全国制覇を狙えた実力派に、19安打を浴びせた嘉手納の戦いぶりは衝撃的だった。

 この試合後、嘉手納の大蔵宗元監督はこうコメントしている。

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