「これがオレの生きる道」。変則フォームで戦う球児たちの心意気 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 最後に紹介する変則フォームは、唐津商(佐賀)の大型右腕・谷口優成だ。木更津総合(千葉)戦の先発マウンドに上がった谷口が投球練習を始めると、4万1000人の観衆で埋まった場内にどよめきが広がった。あるスカウトからは「あれ、二段モーションじゃないよね?」という声もあった。

敗れはしたが、木更津総合戦で好投した唐津商のエース・谷口優成敗れはしたが、木更津総合戦で好投した唐津商のエース・谷口優成 谷口の投球フォームは、セットポジションから右足で立った直後、体重移動を始める前に右足がわずかに伸び上がる。一部メディアは「カクン投法」や「ピクピク投法」と命名していたが、玄界灘から打ち上げられた活きのいい魚が「ピチッ」と跳ねる動きにも似ている。

 谷口に今のフォームに至る経緯を語ってもらった。

「ボールを速くしたいと思っていた時に、吉冨(俊一)監督から『左足をサード方向に蹴り出してみろ』と言われて、冬からそのフォームに取り組みました。今年の春から実戦で投げ始めて、スピードは120キロ台後半から136キロまで上がりました」

 谷口はこう説明するが、左足の使い方を変えたことはわかっても、軸足である右足を中心に体がピクッと伸び上がる理由にはつながってこない。そこで吉冨監督にも聞いてみた。

「私としては左足を蹴り出して、かつ捕手に向かって並進運動して投げるイメージだったんです。でも、谷口はもともと伸び上がるクセがありまして、並進運動にならなかった。伸び上がることを『我慢しろ』と伝えていたのですが、どうしても右ヒザが伸びることが改善できませんでした」

 つまり、谷口の伸び上がるような特殊な動きは「クセ」としか言いようがないものだった。

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