「これがオレの生きる道」。
変則フォームで戦う球児たちの心意気

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 中越(新潟)の1番打者・斉藤隆弥は身長167センチ、体重65キロの、一見すると平凡な高校球児だ。だが、打席に入ると斉藤の異色ぶりは一気に際立つ。両腕を絞り込むように窮屈そうにバットを握って構えると、投手の始動に合わせてバットの先端を地面に垂らし、そこからバットを引き上げてトップを作る。一部メディアからは「サムライ打法」と名づけられていた。確かに腰のあたりからバットを引き上げる動作は、鞘から刀を引き抜いているようにも見える。もしくは日本海の荒波のなか、釣竿で大魚を釣り上げているようにも見えるので、「一本釣り打法」というネーミングでもよかったかもしれない。

中越のリードオフマン・斉藤隆弥中越のリードオフマン・斉藤隆弥 斉藤はなぜ、このフォームに行き着いたのだろうか。本人に聞いてみた。

「今年の春先からまったく打てなくて、どうすれば打てるか考えて、この形になりました。前は普通のフォームで打っていたのですが、余計な力が入ってしまったりして『動きの中で打つ』ということができずにいました。最初はヘッドを少しクイッと入れるくらいの小さな動きだったのが、少しずつ大きくなって、今の形がしっくりきました。余計な力が入らず、ボールが当たる位置でヘッドが走る感覚があります。一番いいのは前よりもタイミングが取りやすくなったことです」

 このフォームを固めていったことで、斉藤の打撃は確実に変わったという。ボールを捉えやすくなり、飛距離も伸びた。何よりも1番打者としてチームに貢献できている実感があった。夏の新潟大会では打率.240と平凡だったものの、チームは2年連続の甲子園出場を決めた。

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