優勝候補対決の明暗。雷雨中断の間に履正社、横浜は何をしたか (4ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 一方、寺島は対照的だった。1度目の中断のときは打席途中のため打者としての準備だったが、2度目の中断のときは打席も終わり、次の回の投球に備えてブルペンで投球練習をした。このときに目立ったのは、途中で正捕手の井町大生と代わるまで受けていた背番号12の溝田晃生。溝田はただ受けるだけでなく、1球1球声を出して盛り上げながら捕球していた。

「あそこは流れが変わるかもしれない大事な場面。中断でモチベーションを上げるのは難しいので、こちらとしても何かしよう、手助けしようと。『ボール来てます』とか1球1球言うことで、寺島さんのテンションが上がればいいと思ってやりました」

 中断後、最初のイニングとなった3回表の寺島の投球は、"憎い"のひとこと。9番の渡辺翔に対して初球は変化球で入ると、2球目は135キロ、3球目は136キロ。4球目に142キロがあったが、5球目の134キロでピッチャーゴロに仕留めた。逆転し、しかも「投げ合いたい」と言っていた藤平が出てきた。それでも力を入れて投げない。相手を見ながら投げる余裕があった。

 この試合で横浜は7回表に福永、9回表に申晟守(しん・じゅんす)が代打で出たが、いずれも初球は変化球。相手が打ち気と見るや、軽くいなす巧みさだった。福永は言う。

「代打だったので初球は目一杯振るつもりで、真っすぐを狙っていました。でも、来たのはチェンジアップ(空振り)。いい配球をされました」

 中断の時間をうまく使ってマウンドに上がる準備をした履正社と、それができなかった横浜。打ち気の打者を見てチェンジアップでかわした寺島と、相手が待っているストレートを投げ込んだ藤平。状況を考えて、万が一に備えることができるか。相手の心理を考えて、自分がやりたいことよりも相手が考えていないことをやれるか。

 身体の準備と頭の準備。ともに上回った履正社の準備力の勝利だった。

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