優勝候補対決の明暗。雷雨中断の間に履正社、横浜は何をしたか (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 本塁打の後、9番の若林健治を四球で歩かせたところで、再び雷雨による40分間の中断。再開後の先頭打者・福田観大に死球を与えると、平田監督は石川をあきらめ、最速152キロを誇るエースの藤平尚真をマウンドに送った。

 二死一、二塁の初球。

 横浜バッテリーが選んだのは、左打者への内角ストレートだった。146キロとスピードは十分だったが、この球を待っていたのが2番の北野秀。完璧にとらえた打球は、ライトへの2点二塁打になり、横浜はこの回だけで一気に5点を失った。

 北野からすれば、「藤平=速球」のイメージがあるうえに、チャンス。積極的に行く気持ち満々だ。おまけに先発してこなかったエースが出てきた。「よっしゃ。こっからや」とよりいっそう気合いが入る舞台が整っていた。

「ストレートを狙っていました。データを取っていて、藤平は初球の入りとストライクを取る球はストレートが多いんです」(北野)

 まさに、おあつらえ向きの速球を投げてしまった結果が、初球タイムリーだった。

「前の試合から左バッターのインコースの球はよかった。藤平の一番得意としている球なので。相手がストレートに(ヤマを)張っているのは読めなかった」(徳田)

 もうひとつ、北野が146キロの球を打てた要因がある。

 それは、藤平の状態だ。藤平はライトからの登板。ブルペンでの投球をしておらず、準備不足のままマウンドに上がった初球だった。

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