「ヒグマの親分」に導かれた甲子園。クラーク国際が踏み出した一歩 (5ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「すぐに負けるからヒマな時間が多かったんだよ(笑)。勝てないからといってガリガリやっても、やりすぎは壊れるのを知ってるから。追い込むんじゃなくて、我慢だね」

 もうひとつは、ベンチで吠えなくなったこと。現在のベンチで吠えるのは、もっぱら達也部長だ。

「役割分担だね。ギャーギャー言うのは息子に任せてる。オレ? オレはオヤジギャグを言ってるよ(笑)。60歳でガミガミ言ってたらダメだよ。あっちにもこっちにも言われたら生徒はかわいそうだから。最近は審判にもギャーギャー言わなくなったよ(笑)」

 そう言って笑う顔にはしわが増えた。だが、やっぱり、親分らしいところは変わっていなかった。

「即戦力を連れてきて勝ったわけじゃない。『クラークは弱いよ。甲子園はまだ行かないよね』と言われている状態だったから、悪役みたいな感じはなくなった。でも、ここからだろうね。全国から(入部希望者が)来るだろうから」

 甲子園を見て、全国から入部志望者が増えるのは間違いない。待望の専用球場も完成し、さらに環境は整った。当初は8月17~19日に智弁和歌山と北海を招いてこけら落としの予定だったが、甲子園出場で記念試合は来年のゴールデンウイークに延期された。ちなみに、その専用球場は「バッティングがよくなるように設計した。高嶋(仁、智弁和歌山監督)さんに話したら、『それはようなるわ』って言ったよ。どんな設計? それは、来ればわかるよ」ということだ。

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