中越・今村豪「たった2球の失投」を招いた絶好調というワナ (2ページ目)

  • 中村計●文 text by Nakamura Kei
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 大ピンチという状況だけでなく、そこまでノーヒットで抑えてきただけに、1本の長打が、実際以上に重圧としてのしかかってきた。

「失投は1試合の中で必ず何球かある。でも、それがいちばん大事なところで出てしまい、焦った。次、5番打者ということもあり、ヤバイなと気持ちが乱れてしまった」

 右の5番・河原大成に対し、3ボール1ストライクとボールが先行した。一塁が空いていたこともあり、歩かせてもいいと思って投げた外のストレートが、再びやや内側に入った。

 直後、低いライナーが左中間を割っていた。

「あの場面は、間をあけるぐらいのゆとりがあればよかったんですけど......」

 いくら調子がよかったとはいえ、9回一死までノーヒット・ノーランは出来過ぎだった。にもかかわらず、それに見合った強い自分を演じようとし過ぎるあまり、冷静さを欠いた。

「中越の1番をつけさせてもらっている以上、弱い顔を絶対に見せちゃいけないと思った。気負い過ぎましたね。もっと早い段階で打たれていたら、ピッチャーは自分だけじゃないんだからって、もっと周囲の状況を見ながら、余裕をもって投げられたと思うんですけど......」

 中越は昨年に続き、初戦でサヨナラ負けを喫した。

 この日は本田仁哉監督の誕生日でもあったため、今村は「失投で負けてしまってすいません......と言いたいです」と唇をかんだ。

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