亡き恩師に誓う1勝。元プロ監督、市尼崎・竹本修の挑戦

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 優勝翌日、竹本は島本高校の近くにある小橋の自宅を訪ねた。「遅くなりました」と仏壇の前で頭を下げると、真っ黒に日焼けした笑顔の写真から「ようやったな」と返ってきたように思えた。

 生前、竹本の話になると小橋は人懐っこい笑顔を浮かべながら、「アイツは真っすぐな男やからなぁ」と、ひと言入れてから語ることがよくあった。真っすぐゆえ、遊びがなく、衝突もあり、生徒を追い込んでしまうこともあった。

 しかし、その竹本も変わった。2012年から2年間、監督を外れて部長としてチームに関わったことも大きかった。

「あのタイミングで監督を離れ、視野が広がりました。選手を見るにしても普段はどんなヤツなのかとか、いまチームはどういう状況なのかとか、いろいろ見えるようになりました」

 監督として復帰したとき、無駄な力みが抜け、選手たちの力が引き出される下地が徐々にできつつあった。そして小橋の死。ここで竹本は、小橋がイチアマ野球部に捧げた思いをもう一度、深く考えた。

「小橋先生が亡くなって、オレはいったい小橋先生の思いをどれくらい継いでやってきたのかと考えたら、ひたすら申し訳ない気持ちになって......。ガンを患い、明日どうなるかわからない状態でもユニフォームを着て、ギリギリまでノックを打って、選手たちと真正面から向き合う。それに対して自分はどうなんだ、と。もっとやれることもありましたし、甘えていました。本当に恥ずかしい気持ちになって......」

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