春夏連覇のキーマン。智弁学園・太田英毅が秘める「圧倒的能力」 (3ページ目)

　一方、小坂監督に太田の守備について聞くとこんな答えが返ってきた。

「守れないことはないんですが、まだ今の力でショートを守るのはしんどいかな......と。新チームになったら、またショートを守らせたいと思っています」

　小坂監督は太田がどんなミスをしても怒ることはないという。むしろ「おだてて、（気分を）乗せてやって」（小坂監督）と寛大に接している。太田の長所を損なうことなく、自由闊達にプレーさせてやりたいという親心だろう。

　こうした我慢が実を結んだのか、太田はようやく甲子園にアーチを架けた。そして続く２打席目もライトにヒット、３打席目には甲子園の深い左中間スタンドにわずかに届かない大飛球を放った。小坂監督は試合後、やや安堵したような表情で言った。

「持っているものはすごいです。あのホームランでいい流れになってくれたらいいですね。これを機に、チームを引っ張ってもらいたい」

　太田の打撃は、軸がほとんどブレない。速球に対しても変化球に対しても、ゆったりと柔らかく間（ま）を取って、ボールを呼び込む。そしてフルスイングするわけではなく、ふわりと運ぶように放物線の打球を飛ばすことができる。この日の本塁打も本人が「チェンジアップを狙って打った」というように、緩急に崩されることなく捉えている。また、「監督から言われてトップからのムダな動きをなくした」（太田）という修正もうまくはまった。