「ありんこ軍団」八王子はどうやって
甲子園にたどり着いたのか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 春の東京都大会ではベスト8に進出して西東京大会の第2シードを獲得。そして春以降は打撃力を重点的に強化して、今夏を迎えた。

 今春の公式戦では捕手の細野悠、遊撃手の竹中という守備の要以外はレギュラーを固定しなかった安藤監督だが、今夏はほとんど打順を動かさなかった。それは1年間かけて選手の得意・不得意など適性を見極めながら、打線のつながりを追求して編み出した打順だったからだ。身長158センチの小兵ながら、今大会打率.476をマークした2番打者・竹中は言う。

「3番の椎原(崚)はバントやエンドランなど小細工もできるし、長打も打てるし、足もある。何でもできるので、僕は後ろにつなぐことだけを考えています。夏にかけて、この打順がフィットしてきた感じがします」

 打線のつながりのよさを象徴するように、準々決勝の早実戦では2点を先取されても、5回裏に相手のミスにつけ込み、3安打を絡めて一挙5得点で逆転。同点打を放った竹中が「昨年の経験が生きた」と語るように、平常心で名門校を破った。

 それでも準決勝を終えた段階で、不振にあえぐ打者がいた。14打数1安打と結果の出ない1番打者・山口駿だ。しかし、安藤監督は決勝戦でも打順を変更することなく、山口を1番に起用する。すると山口は、3安打2打点1盗塁と爆発。延長11回に決勝のタイムリー三塁打を放つなど、優勝に大きく貢献した。

「山口は夏の前からずっと『打てない』と言われていて、誰よりも打ち込んでいました。僕らが休んでいる間も練習していたので、今日結果が出てよかったです」(川越)

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