初出場「きらやか銀行」が都市対抗で起こした創部65年目の奇跡 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 梅津は言う。

「今まで相手チームの分析を突き詰めてしていなかったのですが、今年からしたほうがいいんじゃないかと思って、自分か ら申し出て分析を始めました。わからないなりにやっていたのですが、東北2次予選で成果が出始めて、都市対抗でもバッテリーがうまくデータを使ってくれ て、これ以上ないというくらい抑えることができました」

 大卒ルーキーながら正捕手を務める安成祐太郎も、梅津のデータが大いに役立ったと証言する。

「何も知らないでゲームに入るよりも、打球方向やどんなバッターか雰囲気を知っていたほうが、配球の組み立てがしやすくなります。梅津さんが細かくデータを取ってくださったおかげで、いい形で抑えることができました」

  梅津は対戦相手の映像をできるだけ多く集め、各打者の打球方向の傾向や、弱いコース・球種を徹底的に洗い出していた。さらには知り合いの人脈を駆使して、 「どんな打者か」という情報も収集。さまざまな角度から情報をすり合わせ、確度を高めた上で選手と共有した。たとえば、パナソニックの4番打者・柳田一喜 の打球方向は「センターから逆(右)方向」という傾向があったという。バッテリーはその方向に打球が飛ばないように、自分たちの配球を考えることができ る。

「柳田さんは一発があるので『インコースは後で使おう』と思って、序盤は外角中心に攻め、後半からインコースを攻めました。打者の雰囲 気を知っておくことで、試合を通しての配球の組み立てを考えることができました。柳田さんを抑えられた(5打数0安打)ので、大量失点にならずに済んだと思います」(安成)

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