地方大会で見つけた100発コンビは、チームを初の甲子園に導くか

  • 安倍昌彦●文・写真 text by Abe Masahiko

 緩いボールを強く振ってはいけない。彼のような力のある打者なら、軽く合わせるだけでも飛んでいくはずだ。見たかったのは、投手の肩口あたりを強烈な当たりで抜けていくセンター返しだった。

 とはいえ、間違いなく大砲であることは、ユニフォーム姿でわかった。内側から圧するようなパンパンの太ももと二の腕。バットがとても軽そうに見えるスイングが、それを証明してみせた。

 あとは実戦力だ。自分のバッティングをするだけではなく、相手のピッチングに合わせる技術。どんなに緩急をつけられようが、苦もなく弾き返してしまう対応力が必要になるだろう。

 そういう意味で、この日「おっ!」と思わせたのは1番を打つ糸野(遊撃手/右投右打)だった。こちらも、高校通算40本以上のホームランを打っているというから、立派なスラッガーだ。

 だが、まず驚かされたのは試合前のシートノックだった。びっくりするほどのスピードはないが、ボールの扱いに慣れているというか、捕球体勢に入ったらエラーをしない。そんな堅実なフィールディングを見せてくれた。

 この試合での守備機会は2回だけだったが、ゴロのバウンドに合わせていくタイミングが素晴らしい。捕球してからの動作も速く、しっかり握って投げるため正確なスローイングができる。今はショートを守っているが、サードやセカンドも十分にこなせるだろう。

 一方、バッティングはどうか。アウトコースの外から入ってくるスライダーはライトへ、ストレートはセンターへ。フィールディング同様、派手さはなくても、じつに理にかなったバッティングをする。

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