近鉄「いてまえ魂」を受け継ぐ男、三田学園高監督・羽田耕一の挑戦

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 着実にレベルアップしていく選手たち。一見、順風満帆に見える高校野球監督生活だが、この1年間、三田学園は公式戦で結果を残すことができていない。指揮を執った2015年春以降、ここまで公式戦での勝利はわずか1勝のみ。羽田監督はその苦悩を明かした。

「言われたことに真面目に取り組む生徒が多くてそれはいいんやけど、どうしても内弁慶というか、大会になると普段できることが緊張してできない。去年の夏も、秋もそう。勝負に対する貪欲さがもうひとつ乏しいのかな……」

 練習試合では県大会で上位に進出するような強豪を相手に互角以上の戦いをすることも増えてきた。それでも、公式戦では本来の力を発揮できない選手たち。かつて「いてまえ打線」の一角を占め、プロ通算1504安打、225本塁打を記録した強打者としては、なんとも歯がゆい状況に違いない。

「野球の試合は、ある意味『ケンカ』なんですよ。そんな気持ちで臨んだら、全然違った結果が出る。なんぼ技術を持っていても、本番で出せなければ上にはいけないですから」

 選手たちを精神的に強くするためにどうすればいいのか。練習を厳しくしようと考えたこともあったが、曜日によっては7時限目まで授業があり、1時間ほどしか練習時間が取れない日もある。羽田監督にとって試行錯誤の日々が続くが、それでも「個々の技量は確実に上がっている。夏は大会の雰囲気に慣れて、ちょっと弾みがつけばいいところまで行けると思う」と期待を口にする。

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