離島同士の初戦。八重商に阻まれた八重高の甲子園への挑戦は続く (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 9回裏の攻撃を前に、仲里監督は円陣を組んで、選手たちにこう語りかけた。

「あきらめたら終わりだよ。3年生を出すから、自分たちの想いをしっかり出してこいっ」

 最終回、背番号17の川満兄(龍馬)が代打に出た。結果は、空振り三振――。

 川満兄は言った。

「迷わず、思い切って振りました。気持ちは出せたので、悔いはありません。自分は八重高が好きですし、八重高のメンバーで甲子園へ行きたかった。でも、甲子園はちっとも近くなかった。ものすごく遠かったと思います。実力、精神力、運、すべてが揃わなければ辿り着けない場所なんだと、思い知らされました……」

 背番号4をつけた弟の拓也は、兄のスイングをネクストバッターズサークルでしっかり見届けた。試合後、彼は泣きじゃくりながら、こう話してくれた。

「兄貴が練習してきたのを一番近くで見てきて……兄貴がいたから自分も頑張れたし、結果は三振でも、すごくカッコよかった。中3のときは、八重商で野球をやろうか、八重高でやろうかすごく迷ったこともありましたけど、人生で一度しかない高校野球を、兄貴と一緒に八重高でやりたいと思いました。去年も兄貴と一緒に負けて涙を流して、今年もまた涙を流して、この2年連続の涙をもう二度と流さないように、兄貴がいけなかった甲子園というところへ、次こそ、八重高を連れていきたいと思ってます」

 八重山商工8-2八重山。

 新聞に載る約4000の試合結果は、わずか一行で表記される。

 しかし、その一行には甲子園へ懸けた球児たちの限りない想いが等しく詰まっている。

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