八重高か八重商か。石垣島の野球少年たちの、それぞれの決断 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 参加63校、第1シードは春の覇者、糸満。以下、シード校は豊見城、未来工科、沖縄尚学。もちろん秋の覇者である八重山も、準優勝の興南も侮れない、群雄割拠。そして、八重山商工には選手たちのモチベーションを高める理由があった。八重商を率いて13年目、離島の高校に全国で初めて自力での甲子園切符をもたらした伊志嶺吉盛監督の、この夏限りでの勇退が決まっていたのである。

 八重高にとっても、八重商にとっても特別な夏。

 さあ、いよいよ抽選だ。

 すると、きまぐれな甲子園の神様がイタズラ心をのぞかせた。

 開会式直後、コザしんきんスタジアム(沖縄市)の第1試合。

 八重山-八重山商工。

 なんと、八重高の初戦の相手は八重商。まさかの石垣島ダービーの実現である。これまでに春や秋の大会での対戦はあったものの、夏の大会で激突するのはこれが初めてのことだ。

 石垣島には、八重山農林を含めて3校しか高校がない。当然、対外試合の機会は少なくなり、大会となれば遠征費もかさむ離島からの甲子園出場は容易ではない。そんなハンディを抱えながら、過去、八重高が甲子園に近づき、八重商は春夏一度ずつの甲子園出場を叶えた。切磋琢磨しながら刺激しあってきた八重高と八重商には、子どもの頃からいろんなチームの仲間、敵として、互いをよく知る選手たちが散っている。高校に進んでからも両校は毎週のように練習試合を行ない、手の内を知り尽くしていた。八重高の主将を務めるショートの友利有也は、こう言っていた。

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