東大野球部、悲願の勝ち点1はこの春に実現するのか? (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Tomohiro Motonaga
  • photo by Jiji photo

 試合は2対2の同点で迎えた最終回に動いた。9回裏、東大の攻撃ツーアウト2塁から、3番・山田大成の右中間を破るヒットでサヨナラ勝ち! 宮台を使わずに勝ったことで14年ぶりの勝ち点が見えてきた。

 しかし、明大との第3戦、宮台のピッチングは冴えなかった。土曜日に見せた勢いも躍動感もなかった。コツンコツンとヒットを打たれ、小首をかしげながら3回でマウンドを降り、試合は3対12で敗れた。136球の完投から中2日。初体験となるこの登板で多くを期待するのは酷かもしれない。しかし……。

 ここで昔話をしよう。昔話といっても、ほんの30年ほど前のこと。当時の東京六大学のエースは、毎試合のように投げていた。第1戦に先発登板し、第2戦はリリーフとしてマウンドに。勝ち点のかかった第3戦にまた先発して最後まで投げ切る──。そんなことも当たり前だった。これは、明治でも法政でも、早稲田でも慶応義塾大学でも立教大学でも同じ。武田一浩(明治)、志村亮(慶応)、小宮山悟(早稲田)もみんなそうだった。

 分業が進んだ今では時代遅れと言われるかもしれないが、「勝てる可能性がある試合は全部投げる」のが東京六大学野球のエースだ。

 宮台のピッチングは、かつての六大学のエースと同じ気迫とプライドを感じさせる。
「自分が投げる試合は絶対に勝つ」「1点もやらずに最後まで投げ切る」という覚悟が背番号1から見える。

「宮台くんの前回の登板は中2日でしたが、それがコンディション的に難しかったのかもしれません」

 立大時代に通算20勝をマークした多田野数人(元北海道日本ハムファイターズ。現石川ミリオンスターズ投手兼投手コーチ)は言う。
「むしろ、先発した翌日にリリーフで投げるほうが、無理がきくものです。もちろん、体はきついのですが、気持ちが乗っているので。経験を積めば、第3戦までもつれることを想定して第1戦で力をセーブできるようになるかもしれませんが、まだ難しいでしょう。まず第1戦に勝つことを考え、第2戦に登板のチャンスがあれば全力を尽くすこと。それしかないと思います」
 

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