駒苫vs早実、伝説の決勝から10年。
野球を諦めた男たちの「88会」

  • 菊地高弘●取材・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro
  • 片平裕志●取材協力 cooperation by Katahira Yuji

「高校時代はハンドボール部でした。彼らとは飲み会で知り合った、普通の野球好きのサラリーマンです(笑)。早実と駒大苫小牧の決勝戦はテレビで見ていたので、視聴者感覚ですよね。でも、88会では野球にとらわれずに活動していければと思っています」(山崎顕祐)

「大学ではミスコンを主催するイベントサークルにいました。野球経験のない、ベイスターズファンです。1回も経験がないのに、みんな明るく迎えてくれてやりやすいですね。『いつか彼らから打ってやる!』と思いながら練習していて、その過程をYouTubeにアップしようかなと思っています」(飯田幹生)

 プレー経験がなくても、「野球が好き」ならOK。その懐の深さからも、船橋の言う「野球に限らず社会貢献活動をしたい」という思いが表れている。

 船橋は大学卒業後、大企業に就職したものの、「勝負している感覚が持てなくて、自分を追い込みたかった」と退職。ベンチャー企業への転職を経て、現在は人事コンサルティング会社を起業した。「一国一城の主」として、人生の勝負を賭けている。

 船橋は言う。

「僕は甲子園で優勝したことは、『思い出』以上のものはないと思っています。でも、こうして早実と駒苫のメンバーが再び東京で会ったのは、何かの使命なのかなと。88会の活動はこれからですが、地方出身のメンバーから『東京に飲み仲間ができた』と言われるのがうれしいですね」

 それぞれが本格的な競技生活にピリオドを打ち、それぞれの人生を歩みながらも、彼らは再び「野球」のもとに集まった。プロという大舞台でスポットライトを浴びる同期たちに夢を託しながら、ノンプロ88会はいま、野球に恩返しをしようとしている。

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