2016.04.17

駒苫vs早実、伝説の決勝から10年。
野球を諦めた男たちの「88会」

  • 菊地高弘●取材・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro
  • 片平裕志●取材協力 cooperation by Katahira Yuji

 この打球を放った中澤竜也は、「伝説の試合」に駒大苫小牧の3番・ファーストとして出場していた。決勝再試合の9回に1点差に迫る2ランホームランを打った選手といえば、思い出す野球ファンも多いだろう。駒大苫小牧を卒業後は國學院大に進学し、現在は國學院大学職員として勤務している。

「田中もそうなんですけど、大学で大場翔太さん(東洋大、現・中日)と対戦して、『ぶっちぎりでプロに行く人は違う』と思い知らされました。大学1、2年まではプロを目指していましたが、自分が一線級でプレーするイメージが湧きませんでした。プロに行くことを目標にしていたので、社会人でプレーする道は考えずに、大学の事務職員として就職しました」

 草野球に興じているのは、10年前に甲子園決勝を戦った男たちだけではない。グラウンドには、天理(奈良)時代に主将を務め、甲子園で本塁打を放っている藤原宏文の姿もあった。後藤にヤジを飛ばした藤咲は高校時代に横浜隼人(神奈川)でプレーし、その後はアメリカの大学を経て、国内の独立リーグにも所属したことがある。共通点は、みな1988年度生まれの同世代ということだ。

 この集まりの正式名称は何というのですか? そう尋ねると、会の主宰者のひとりである船橋悠は、少し困ったような顔をした。

「あぁ~、正式な名前はまだ決めていないんですよね。僕らは『ノンプロ88(はちはち)会』って、勝手に呼んでいるんですけど」

 船橋は早実の5番・左翼手として「伝説の試合」に出場していた。再試合では初回に先制のタイムリーヒットを放っている。この草野球グラウンドには船橋のほかに、前出の後藤、2番・三塁手の小柳竜巳、引き分けになった試合で途中出場した二塁手・神田雄二という早実OBが集まっていた。