センバツで発見。プロに育つ可能性を秘めた3人の「遊撃手」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 それでも林中の能力ならもっと打ってほしかった。林中自身は「打てないのはしょうがない。技術がないんですから。今は技術が足りない分、気持ちで補うしかありません」と言うが、決してそんなことはない。冷静な判断と高い技術は、このセンバツのなかでも際立っていた。

 福武と林中を追うように、このセンバツでドキッとさせられるような強肩とスイングスピードを披露したのが、智弁学園の2年生・太田英毅(175センチ76キロ/右投右打)だ。ただ、福武と林中のふたりに比べて、絶対的な安定感はまだない。

 バウンドの合わせ方に課題があり、打球に差し込まれ体が直立したまま捕球し送球するため、大暴投になる場面があった。打球に対して初動のスピードが鈍るのは、守りへの不安と恐怖心みたいなものが作用しているのかもしれない。

「守備はヘタです。むちゃくちゃヘタです! たぶん、出場32校のショートのなかで一番ヘタやと思います」

 敢然と言い切ったその姿に、太田の人間的なバイタリティを感じた。

「自信があるのは、肩の強さだけですから」

 その言葉通り、試合前のキャッチボールが素晴らしかった。40メートルほどの中距離だが、指にかかったボールが低く伸びる。何球投げても、球の勢いにムラがない。これがつい1年前まで中学生だった球とは思えなかった。もはや社会人のような球道。

 上半身も強いのだろうが、下半身にも強靭な粘りがなければ、こんなキャッチボールはできない。

 だから、スイングスピードもすごい。

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