センバツで発見。プロに育つ可能性を秘めた3人の「遊撃手」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 自分の身体能力を念頭におき、見合ったお手本を見つけて、目標に近づくためにオリジナルの練習を盛り込む。まさに「あっぱれ!」である。だから意欲が湧くし、工夫するから知恵もつく。プロで仕事ができるのは、そういうヤツだ。

 敦賀気比の林中勇輝(180センチ72キロ/右投右打)も、昨年からずっと注目していた遊撃手だ。福武とは対照的に腰を割った姿勢で打球に入っていって、捕球した高さで送球する。姿勢が低いから難しいバウンドのゴロでも最後までボールに目がついていく。

 正面のゴロは、打球と打者走者の両方を視野に入れながら頃合いのスピードでアウトに持ち込む。スピードに溺れないから、プレーに間違いがない。安定感はピカイチだ。

「去年のセンバツでは緊張してしまって声が出ていませんでした。今は、自分から声を出してリラックスするようにしています。声を出すって、息を吐くということ。それがリラックスにつながるんです。去年のキャプテンの篠原(涼)さんが周りに気を遣う人だったので、自分も見習おうと。特に、力みが見える選手にはよく声をかけるようにしています」

 競馬の武豊騎手にちょっと似た雰囲気の笑顔でゆっくりと語る。

 初戦の青森山田戦でタイムリー1本、敗れた2回戦の海星(長崎)戦はレフトスタンドに豪快な一発。たとえば、二塁走者を還してほしい場面では、低めの変化球をヘッドで懸命に拾ってヒットにする勝負根性。ホームランを狙ってもいい場面では、タイミングを合わせてフルスイング。テンションは上がっているが、燃えすぎて自分を見失うことはない。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る